『渾遊(こんゆう)〜褌の詩〜』
栗浜陽三著。第二書房刊。初版昭和48年9月30日第一刷発行。カバ完本。ハードカバー角背上製。定価3000円。大判。
のっけから唐突な問いで恐縮だがなぜホモ族の世界では男の下着は「褌」と相場が決まっているのであろうか?最近はケツワレサポーターやスーパービキニも人気のようだがまだまだ「褌」の人気には及ばない。
その答えは筆者が思うに「褌」という下着をキリリと締めることでホモ族の男たちは自分が「日本の男の世界」換言すれば武士道や特攻隊の精神にも似た「日本的悲壮美の世界」に参入しているという感覚に陶酔してしまうからではないのだろうか?
さて本書『渾遊』はそんな日本の男たちの褌姿が満載の写真集である。海、林、草原、等で遊び戯れる褌一丁の男たち・・・これはホモ族のユートピアの世界なのであろう。とりわけ筆者が目に付いたのは仏閣に立つ褌一丁の男の写真である。その引き締まった肉体から日本中世期の羅漢像を連想されるほどの崇高さを筆者は感じたのである。
さて本書はゲイ写真集の中でも出ない部類の本である。やはり題材が「褌」だけに所有者が手放したくないのであろう。それでも男色家・または男色研究者は必携の一冊といってよいだろう。本書はそれほどの魅力にあふれた本だ。