『戦果の無い戦争と水仙色のトーチカ』
一色真理著。新世代工房発行。初版1966年4月1日。裸本完本。
『純粋病』でH氏賞を受賞した一色真理の第一詩集。
一色真理はあの歌人・三枝昂行をして「こんな暗い顔をしていなければ詩人にはなれないのか?」と言わしめたほどの大人(たいじん)である。
そのことは本書を読めば納得できるだろう。本書で繰り返し登場する「死」のモチーフは、一色真理がすでに死んだ者の眼を獲得して世界を眺めていることを如実に表している。それほどまでに本書の闇は深い。かかる詩篇を書く詩人こそ本当の詩人と言う者なのであろう。
さてH氏賞受賞以前の詩集というものはたいがい出ない本が多いが本書も出ない。入沢康夫の『幸せそれとも不幸せ』や荒川洋治の『娼婦論』と同じ類のやっかいな本だ。それでも欲しいというひとは心を鬼にして探すしかないだろう。ちなみに古書価も高い。