『さるやんまだ』

 

 

佐々木安美著。遠人社発行。初版1986年5月5日。裸本完本。小型本。 

 佐々木安美のH氏賞受賞詩集。ちなみに本書は第三詩集。第一詩集は『棒杭』(私家版)。第二詩集は『虎のワッペン』。この題名の『さるやんまだ』とは本詩集の主人公「さるやん」に対し家族が「まだ?」と呼びかけていることに由来する。この主人公「さるやん」のなんとも陰鬱なサラリーマン生活が本書の中心的主題であるが、そこに一抹のユーモアを加味させることで、本書は独特の持ち味を醸している。「朝の支度の面倒さ」や「会社に行きたくない」などの一歩間違えば愚痴に堕するテーマを著者はこの一抹のユーモアでうまく詩的に昇華させているといえよう。
 さて本書は1980年以降のH氏賞詩集で最も入手が難しい。『狂泉物語』もでないが、本書はさらに出ない本なのだ。H氏賞コレクターのネックになる難本といえよう。