『無援の抒情』
道浦母都子著。雁書館発行。初版昭和55年12月25日発行。カバ完本。定価2000円。解説福島泰樹。
昭和55年度の現代歌人協会賞受賞。歌集としてはめずらしく一年で五刷増刷されるという異常な人気を巻き起こした歌集である。その購読層は歌壇ではなく、当時の大学生等の若者であった。
さて本書の成立は1960年代の学園紛争の時代まで遡る。1980年代の気だるい喪失感に充ちた時代だからこそ、こういった「若者が熱かった時代」に対する憧憬が本書の人気の根底にある。「しらけ世代」と呼ばれた若者たちもまたなにかに飢えていたというべきであろうか?
著書道浦母都子は自身の還らぬ青春の日々を迫真のリアリティで詠いあげ、1960年代のモニュメントを築いたといっても過言ではない。河野裕子の『森のやうに獣のやうに』と共に新世代女流短歌の牽引力となった歌集である。
さて本書の初版第一刷の入手はきわめて難しい。よほどタイミングが良くなければ入手は難しいだろう。
本書は90年代に入ってから文庫化され、ますます新たな読者層を広げている。