『鬼の踊り 大道芸人の記録』
ギリヤーク尼ヶ崎著。ブロンズ社刊。初版1980年11月30日発行。カバ完本。定価2200円。
「最後の大道芸人」、ギリヤーク尼ヶ崎氏の写真&エッセイ集。ギリヤーク氏はなんの予告もなく突然、街頭公演を始めることが多く、その「大道芸」を目撃することは極めて難しい。彼の「大道芸」を観る事の出来た人は幸運だったというべきであろう。さてその芸風は古典的な舞踊のようでもあるし、昨今の「暗黒舞踏」の影響も感じられる。しかし下手に「芸術」を気取る前衛舞踏の踊り手たちより、徹底的にエンターティメントとしての「大道芸」の道一筋を極めようとするギリヤーク氏のほうにわたしは「芸人」としての潔さを感じるのである。
さて本書にはギリヤーク氏の自伝も載っている。ギリヤーク氏がどんな経験をしてあれほどの「大道芸」を完成させたのか、写真と照らし合わせて読者によく考えてもらいたい。「500円の喜捨に涙が溢れた」とあるとおり芸の世界はまこと厳しいものなのである。将来、舞踊にしろ演劇にしろ音楽にしろ「芸」というもので身を立てたい若者諸君にご一読を勧める書物である。
(黒猫館&黒猫館館長)