『性の受難者』
ザッヘル・マゾッホ原著。小西書店刊。初版大正12年12月18日。裸本完本。定価1円60銭。
もはやマゾヒズム文学の「古典」となった感もある、『毛皮を着たヴィーナス』の本邦初訳が本書。わたしが調べたところでは『毛皮を着たヴィーナス』の日本語訳は四種類あるらしい。そのうち一番新しいのが種村季弘訳だが、これは河出文庫に入っているのでお読みになった人も多いかと思う。
さてこの『性の受難者』だが伏字があまりにも多く、その筋の好事家向けとはいえない。なにしろ「イイトコロ」に差し掛かると突然、文字がバッテンだらけになるのだからしらける。その意味でこの本は娯楽用というよりは書誌学的に重要な資料として珍重されるべきものであろう。