『闇への憧れ』
実相寺昭雄著。創世記刊。初版昭和52年12月20日。定価2100円。装丁・挿画石井隆。
特撮ヒーロー番組『ウルトラマン』などの監督で有名な実相寺昭雄氏のエッセイ集。といっても『ウルトラマン』関係のことにはほとんど触れず、自分の映画観や『無常』『曼荼羅』などのATG映画についてのエッセイが主体になった構成となっている。
この本の特徴は日本の中世史の「闇」、飢饉、疫病、地獄観などについての実相寺氏の思い入れが粘着質的に語られる点である。。正に題名どおり「闇へ憧れ」ているというわけだ。また仏教についての考察にも鋭いものを感じる。
本書の装丁・挿画はあのカルト的官能劇画家・石井隆氏。これがまた独特の濡れた味わいで実相寺氏の文章としっくり合っている。
実相寺氏の映像作品をより深く理解したいと思っている上級ファン向けの本である。