『わたしのいもうと』
松谷みよ子・味戸ケイコ著。偕成社発行。初版1987年12月発行。カバ完本。定価1200円。
味戸ケイコの暗黒パワーが全開になったともいえる絵本が本書。松谷みよ子の文章も暗さを通り越してなにか背徳的なニュアンスさえ感じる。ストーリーはあまりに単純。いじめられた子供が部屋に閉じこもり、序序にやせ細り、最後は病気になって死ぬというお話。ここにはなんのメッセージも教訓もない。あるのはいじめに対する鬱屈した・消極的な怒りだけなのである。
正直言ってこの本を読んだ本物のいじめられっ子が「なんらかの成長をする」ということはありえないであろう。それほど本書のベクトルはマイナスに向かっている。ではいったい本書の目的はなんなのか?そこが全くつかめないところが恐ろしい。一種の不条理文学として本書を捉え直してみるのも一興であろう。
黒猫館&黒猫館館長