『あたしが殺したのです』 

 

 

 

森田雄三著。河出書房新社発行。初版昭和36年7月15日発行。函帯完本。定価290円。帯文江戸川乱歩。

 本書は極めて特異な小説である。推理小説であるが、実際は戦前の怪奇探偵小説に近い。とある病院で看護婦長が霊安室に毎夜赴く。使用人が覗いたらなんと婦長は死体の前で全裸で踊り狂っていた。・・・という出だしは猟奇趣味抜群。この手のキワモノが好きなひとにはこたえられない作品だろう。

 またこの小説の特異さは目次にも現れている。「婦長は死体を前にして 祈祷し 何を告白するのだろうか」とか「やむにやまれない病的になるのがマニアである」など目次を読んでいるだけでわくわくしてくるようではないか?

 尚、本書は帯で江戸川乱歩が激賞している。やはり戦前の探偵小説そのままのダイレクトな味わいが大乱歩をして驚嘆させたのであろうか?