『夢のある部屋』
澁澤龍彦著。桃源社刊。初版昭和48年10月5日。函帯完本。大判。定価2800円。
澁澤龍彦のおなじみ薀蓄一杯のエッセイ集。とはいってもこの本は最初から最後までテーマが統一されているところが良い。ゴタゴタと雑文を詰め込んだ本とは一味違うのだ。
さてこの本のテーマは「部屋のインテリア」。「窓」や「階段」、「飾るということ」などについて澁澤流のスマートな弁舌が冴える。好みの問題だがわたしとしては「黒魔術」とか「毒薬」とかの非日常的テーマより「インテリア」のほうが現実的な分興味がある。また穏やかな快楽主義者としての澁澤の一面を垣間見ることができる。
そして野中ユリのコラージュが多数挿入されているのでこちらのほうでも楽しめる。装丁は青を基調とした上品なもの。澁澤のエッセイ集のなかではベスト3に入る傑作本であろう。
日常生活に疲れた時、そっと書棚から出して読んでみたい。そんな本である。