『風流夢譚』

 

深沢七郎著。発行所記載無。無刊記。裸本完本。表紙画シルクスクリーン。 

 1960年12月、深沢七郎が雑誌『中央公論』にこの『風流夢』を掲載したところ、以上な反響が巻き起こった。その結果、深沢七郎は右翼の攻撃を避けて文壇から去ることとなる。

 さてこの『風流夢
譚』であるが内容は天皇家一家惨殺の様子を描いたもの。といっても「マサカリで首を刎ねる」程度のものなので昨今の刺激に慣れた若者には物足りない内容かもしれない。

 むしろわたしとしては作中の「わたし」がこの天皇家一家惨殺の夢から覚めたあと「壊れていた時計が元に戻った」というエピソードのほうが面白かった。これは歴史が修正されて正しく進みだしたということを暗示するエピソードなのかもしれない。

 さてこの小説にはガリ版を含めて様々な版が流通している。写真は表紙にシルクスクリーンをあしらった佳品。わたしのお気に入りである。大江健三郎の『政治少年死す』と抱き合わせで刷られたガリ版刷りの本なら容易に手に入手可能だろう。といっても2つの違う小説がひとつの本に合わさっているのはおかしいと思う向きには本書を探してください。

 

(黒猫館&黒猫館館長)