怪奇小説 骨なし村
昨今届いた合同古書目録で佐藤有文『怪奇小説 骨なし村』(カイガイ出版)が7万円で出ていた。
7万円というと「凄い豪華本!?」と思ったりするのだが、実はこの本はぺらぺらの新書版である。発行年は1977年。そんなに昔の本というわけでもない。なぜこの本がそんなに高いのか。
新書版に7万円とはべらぼうに高い気がするのだが、実はかってヤフオクでこの値段に近い値段にまで競りあがったことがあるらしい。
であるからこの7万円はあながち相場を無視した値段ということはできない。
オカルトの会「マラリア会」に所属し、世界各地のオカルト物件をフィールドワークした伝説上の人物・佐藤有文の唯一の創作物ということがこの本の人気の一因であろう。
しかし佐藤有文の本ならば『世界妖怪図鑑』(立風書房)が最高傑作であると思う。『骨なし村』の高値の要因はまず「希少」度が高いということに尽きると思う。
わたしは20年間、この本を新書版の棚で探しているが一度も見たことがない。
実はこの『骨なし村』、実際に読んだ人はほとんどいないらしい。読んでいる人物がいるとすると唐沢俊一ぐらいか。
あまりにも恐ろしい内容ゆえ回収破棄された、そのような推測も成立しうる。
一度読んだだけで、あまりの恐ろしさに発狂してしまう小説、そのような都市伝説的な小説の話に小松左京の「牛の首」がある。
わたしは『骨なし村』に「牛の首」に似たある種の陰影を感じる。それもどろどろとした不吉な陰影だ。
もしかして『骨なし村』このまま入手できないほうが、自分にとって幸せであるのかもしれぬ。もしかしたら一読するだに何かが起こる。・・・
『骨なし村』とはそんな本自体がオカルト物件である、極めて恐ろしい書物なのかもしれない。
(怪奇王&黒猫館&黒猫館館長)