ドルゲ魔人同窓会
(ハムちゃま作)
「ノウゲルゲ〜・・・」いきなり「巨大な人間の脳」がズルリとバーの暗がりから現れた。
蒼ざめるバーの店員たち。
「ちょっと貴方、あんまり派手に出てこないでよ。貴方はドルゲ魔人の中でも一番目立ってるんだから。」ヒャクメルゲが冷静な口調で言った。
頭をぼりぼりとかくノウゲルゲ。
「いや〜、すんません。それにしてもヒャクメルゲタンは幾つになってもお美しいのお〜。そんなに大きな瞳で見つめないでぇ〜。」
「ちょっと、ノウゲルゲ、貴方、レディに失礼よ。」
2010年、暮れも押し迫った12月上旬、東京・秋葉原の場末のバーでドルゲ魔人の同窓会が開催されているのであった。便宜上の名義は「怪人コスプレ同窓会」。しかしバーの店員にはどう見てもドルゲ魔人たちは本物の怪人だった。事実、本物であるのだから仕方がない。
ヒャクメルゲの横ではクチビルゲがひたすら焼き鳥を食べている。
クチビルゲ「んん〜焼き鳥はウマイ、ウマイのお〜。・・・・ん?そこのおられるのは「ダダミ」(魚の白子のことを指す東北弁)か!?・・・ぐるるるる・・・喰ってやる、喰ってやるぞお・・・!!」
ノウゲルゲははしゃぎながら飛び跳ねる。「キャー!ヒャクメルゲタン、僕、クチビルゲのオッサンにたべられちゃうよお〜!!」
ヒャクメルゲがもう一度冷静な声を出した。
ヒャクメルゲ「ノウゲルゲとクチビルゲさん、ふざけるのもいいかげんにしなさい。今日は35年ぶりのドルゲ魔人の同窓会なんだから、しんみりと飲みたいのよ。」
クチビルゲのさらに横でしんみりと強いウイスキーをあおっていたウデゲルゲが太く落ち着いた声で言った。
「ヒャクメルゲの言うとおりだ。おまえら、ちょっと静かにしろ。ところで今日、来る予定だったドルゲ先生はどうしたんだ?」
ヒャクメルゲが哀しそうに言う。
「それがね、ドルゲ先生、もう10年も前に脳梗塞でお亡くなりになっていたんだって。」ヒャクメルゲの大きな瞳にはナミダが浮かんでいる。
ウデゲルゲがヒャクメルゲに向かって優しく言った。「そうか。・・・残念だな。俺たちの生みの親であるドルゲ先生のためにも頑張ってゆかなくてはな。」
ウデゲルゲがひょいとノウゲルゲに向かって言った。
「ところでノウゲルゲ、お前、東映の平成仮面ライダーの怪人に応募したんだって?結果はどうだった?」
今まではしゃいでいたノウゲルゲが突然しゅんと萎れる。そしてボソリと言った。
「ダメですた。気持ち悪すぎる上、時代錯誤なデザインだって。」
ウデゲルゲ「そうか。それはとても残念だったな・・・」クチビルゲが口を挟む。「全く、このご時世だ。怪人の雇い口すらありゃしねえ。・・・高度成長期がなつかしいぜ。あの頃は怪人とくれば引っ張りだこだったんだがな」
ヒャクメルゲが答える。
「まあ、仕方がないわよ。それでもわたしたちドルゲ魔人は生き抜いていかなけえばいけないわ。いつの日か、超人バロム1を倒すためにね。」
ウデゲルゲ「そうだな。お嬢さんよ。それが俺たちの本来の目的だ。初心を忘れちゃいけねえな。」
ノウゲルゲがまたはしゃぎだした。
「うおー!不況がなんだ!!失業がなんだ!!また夏になったらお化け屋敷のアルバイトで稼ぎまくってやるぜ!!」
クチビルゲ「まあ、お前にはその仕事しかないからな(笑)」
ノウゲルゲ「なんだと!」
ヒャクメルゲがふたりをなだめる「ケンカは止めなさい。今夜は気持ちよく飲みましょうよ。亡くなったドルゲ先生のためにもね。そしていつの日か超人バロム1を倒すためにも。」
ウデゲルゲ「全くそのとおりだ。」
クチビルゲ「異議なし。」
こうして同窓会の夜は更けてゆく。
ドルゲ魔人にとっての本当の試練はこれからであるのかもしれない。しかしいつの日か超人バロム1を倒すという大志を胸に抱いてさえいれば大丈夫だ。少々の試練なら超えてゆける。
この大変な時代を生き抜いてくれ。ドルゲ魔人。
これからも応援しているぞ、ドルゲ魔人!!
(黒猫館&黒猫館館長)