他人を殺さず自分も生きろ

(21世紀の曙を生きる若者たちのために)

 

 

  

君よ、いままさにぎらぎらと光る眼で相手をみつめる君よ。
まず手を下げろ。
サバイバルナイフをテーブルに置け。
そして一分間だけわたしの話を聞け。



君よ。
人間はみな寂しいので、寒さに心震わせている。
しかし相手を殺すことで寂しさをまぎらわせようとしてはならない。
そこまで相手に頼ってはならない。
むしろ自分の孤独と対峙し、孤独と闘え!



また君よ。
母に甘えるように社会に甘えてはいけない。
社会から受ける甘い罰に魅了されてはならない。
社会からの罰を受けずして、君と社会との毅然とした関係を築きあげよ。



君よ。
簡単に注目を浴びようとしてはならない。
殺すことで注目を得ようとしてはならない。
ほんとうの注目とは努力して勝ち取るものなのだ。





君よ。
他人を殺さず、自分も生きろ。
君が殺せば、君は社会から格好の的として吊るされるだろう。
社会は今夜も残忍な眼で生贄の子羊を欲している。

機械的に、なんの感情もなく、選び取られる、
生贄になろうと望んではならない。

君はほんとうは生きたいと思っている。
ほんとうは仲良くやっていきたいと思っている。
父母と。
友だちと。
自分自身と。



だからもう一度、やり直そうではないか。
そのために、まず手に持ったナイフを置け。
そこから、
そこからだけ、君の人生の物語は始まるのだ。 

 

 

(黒猫館&黒猫館館長)