永遠という地獄

 

 

江戸時代、徳川家光の御世。

慶安4年8月10日。
場所は小塚原処刑場。

由井正雪の乱に関わったとして、
丸橋忠弥、その他数名の磔が行われた。

磔の際、罪人の四方を地獄草紙、餓鬼草紙、病草紙を、
ぐるりと廻らせ、処刑の瞬間、その刹那に地獄絵図が、
罪人の瞳孔に焼きつくように仕掛けをしたという。

死してなお永遠に苦しめさせよ!





この酸卑極まるエピソードは、
現代の高度資本主義社会に生きるわたしたちに示唆を与える。

終わりのない労働。
永遠に続く消費活動。

回し車を死ぬまで走り続けるハツカネズミのように、
わたしたち現代人も生きながら無間地獄の闇を彷徨っているのではないのか。




夢の中でわたしは今夜ももがいている。
浅い眠りが良くないのだ。
しかし睡眠薬を使った眠りではこれが限度でしかない。




鉛色の声が重く響く。


「永遠に苦しめさせよ!」
神の見えざる手が槍を掴む。

「永遠に終わりのない死を死に続けろ!」
神の聞こえざる声が漆黒の宇宙に響く。

槍がわたしの脇腹を貫く!


そうして地獄の亡者のように大きく開けたわたしの口からは
絶叫さえも聞こえない。

ただ大きく開いた黒い口がブラックホールのようにすべてを呑み込み続ける。



耳障りな音が聞こえる。



(キイキイ)
 キイキイ)



滑車を滑る橇の音のような
寒気のする音の脇で
わたしは堕胎された胎児のように
もがいている。

もがいている。




ハッ!とわたしは目覚める。
AM4時30分。
今日も仕事だ。


夢なのか。
それともわたしは本当の地獄にいるのか。


苦しみは終わらない。
闇の中で、
わたしは震えている。

いつまでも。

 

 

 

(黒猫館&黒猫館館長)