「ヴェネチアへの夢〜」

 

2008年4月西欧旅行のおもいでと共に

 

 

 

わたしの中に流れる河は
遥かにつづく ヴェネチアへ。

わたしの今夜見る夢は
遥かに映る ヴェネチアへ。



ああ、ヴェネチアよ。


アドリア海に水没する 眠る貴婦人よ。

貴方の白いレエスを纏った姿を わたしに見せておくれ。


貴方はわたしにとって 永遠の教師。
貴方はわたしに教えてくれた。
崇高と頽廃の円菅の秘儀を。



曲りくねった水路を往くゴンドラは 棺(ひつぎ)。
わたしは貴方の冷たい手に抱かれ 死んだ。

大いなる大運河(カナル・グランデ)を往くゴンドラは 揺籃(ようらん)
わたしは貴方の暖かい手に揺られ 復活した。

(ああ、復活の前に死があるね。)



だから いつの日か。

もう一度 その姿をわたしに見せておくれ。
アドリア海に 水没する貴婦人。
ああ ヴェネチアよ。


いつかわたしが虚無の闇へ帰るまでに
いつかまた会おうよ。
あの溜息橋の上で。

ヴェネチアよ。



夢の中で、
今夜も 会いに行くから。

その白いレエスを 纏って、
わたしのまえに姿を 現しておくれ。

ヴェネチアよ。

 

 

(黒猫館&黒猫館館長)