女、汝、哀れし者よ

 

女よ
今夜もまた安楽を噛みしめて
すこやかに眠る女よ

闇から闇へ
幾千の夜をまたぎながら
わたしは来たのだ。

しかし間違うな。
わたしはおまえに安楽を与えに来たのではない。

わたしが来たのは
おまえの絹のやうな肌を鞭打つためだ。
おまえの背からどす黒い鮮血を噴出させるためだ。

わたしは痛みだ。

しかし痛みによってしか知りえない真実もある。
そのためにわたしは来た。
おまえがわたしを呼んだのだ。
おまえの白い肌を血に染めることを望む者。
それはわたしではなく
おまえだ。

おまえは痛苦を欲している。
それを与えるために わたしは来た。

わたしは おまえを鞭打つ。
それはおまえを愛するゆえだ。

愛とは鞭打つこと、そして鞭打たれること。

女よ。
わたしを畏れよ。

痛み。
涙の意味。
残酷の原理。

それをおまえはわたしから学ぶ。
そしていつかおまえは知るであろう。
残酷の原理の学習からしか
学び得ない
愛もまた存在するということを。


†         †


今夜もまたおまえの寝室にわたしは行こう。

わたしは痛み。

生命の証。

そして

果てることのない
限りない

 

(決定稿2003年9月15日)